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Interlude
熊谷勇樹 | Yuki Kumagai


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熊谷勇樹 Lula Books

写真を始めて10年が経った。なぜ自分は何かに急かされるように、写真を撮っているのだろうと考えることがある。 写真は対象を四角に切り取る断定のメディアではないかと思ってきた。取捨選択をして、見たいものを明らかにさせる。しかし、どこか一部を切り取るとそれ以外の部分が消えてなくなってしまう。現前してきたイメージを前に、消えてなくなった部分はどこに行くのだろう。何かを明らかにすることは、それ以外が引っ込むということだ。消失によって余地が与えられる。そんな中、生活をしていると、身の回りで手に負えない出来事が起きることがある。想像を超えた不条理は心に異物感を置いていき、その異物感は理性的に処理できなかったり、一般的な定義で捉えられるものではないと感じる。そもそも自分自身は不確かな存在で、私自身でも把握できない部分が大きい。自分を規定するものをどうにか作って、肯定しているのではないかと思う。また日常生活は写真のように、私に何かを判断をさせて、取捨選択をさせる。その繰り返しが生きていくことであって、心の異物感のある状態や選択に迫られることが日常であるとするなら、私にとって写真を撮るのは、そこから逸れる、離れる、遠くに行くことだと思う。消失によって与えられた余白は、AはAであると規定されているところ以外の場所で、AがA'であるような別の可能性の拠り所になって、どこかでその可能性を期待させてくれる。
Lula BOOKS 2022年刊行 テキスト: 日本語/英語
サイズ: 縦250mm×横185mm ハードカバー 104ページ
  • 5,500円(税込)